来馬 哲平

  • Associate Professor(准教授)アメリカ文学・文化

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  • kuruma@cl.aoyama.ac.jp

 前を向きたくない、という甘えた動機で読書に没頭しているうち、文学を研究するようになっていました。使い古した辞典と洋書を、喫茶店や電車や街路に持ち込み、詩や小説の文字列に、遠くから響くささやきを聴こうとしていた私の学生生活は、申し分なく自閉的なものでした。しかしそれは同時に、厄介で魅力的な他者たちとの濃厚な異文化交流を、言語的・時代的な距離を介して渇望し続けていたという点において、あられもなく開かれた日々でした。

 一つの事に一人で没頭しているつもりでも、共に在ってしまう、自分の世界と「外」をつなぐ通路が、必ずどこかに開いてしまう、という体験は、私個人に特有のものではありません。たとえばそこには、ローカルなものとグローバルなものが激しく混淆していた20世紀前半に、作家たちが詩や小説へ取り込もうとしていたダイナミズムと、連動するものが見出せます。またその混ざり合う運動感には、大学で多様な遭遇体験を享受するであろう皆さんに訪れる詩的な出来事とも、相通ずるものがあるはずです。

 現在私は20世紀のアメリカ詩を研究しており、知名度的にも、ジェンダー / セクシュアリティ的にも、マイノリティに属する詩人たちに関心を抱いています。そのような詩人たちは、自らのマイナー性を、少数のあいだにおいてのみ共有可能な連帯感の発生源として用いるふしがありました。しかし生み出された詩自体には、閉鎖的な共同体を超えて広がる「世界」への開路が、至る所に生じています。インターネットにより、遠くの他者と繋がれる(と夢見られていた)環境が、我々を、近くの知人たちから成る親密圏に自閉させている昨今、遠くの詩人たちが喚起する数々の問題は、すぐれて今日的なトピックを呼び寄せます。我々の生活雑感に帯びる普遍的な私性と、過去の他人が書いた詩の私的な普遍性とが交差する契機を、皆さんと共に見出しながら、様々な問題に遭遇し直し、思考し、対話をしたいと思っています。

研究関心

アメリカ文学 (American Literature)
アメリカ詩 (American Poetry)
モダニズム (Modernism)

担当科目

アメリカ文化特講、アメリカ文化演習、Reading、英作文など