西本 あづさ

  • Professor(教授)アメリカ文学・文化

言葉の壁の向こう側へ!

文学との出会いの頃を振り返ってみると、書物とは未知の世界や人生をのぞき見る場であり、引っ込み思案で内向的な子供だった私は、そこで自分という小さな殻の向こうに広がるものと最も自由に相交わることができた。そこで重ねた感情の経験が、大人への入り口で自分を造り、自分の日本語の感覚を造り上げる土台となった。
大学で米文学と出会い引き寄せられ始めた頃、英語力が不十分だった私は、辞書と首っ引きで原書と格闘しながら、気が遠くなったのを覚えている。こんな風に四六時中辞書を引き、蟻の歩みのように書かれている事柄を解読していて、外国語の文章が母国語を読む時のように、リズムや温度や質感までも自分なりに感じられる日は果たして来るのだろうかと。ただ、大学3年時に出会った南部作家のフォークナーやウェルティ、あるいは私が大学院でアフリカ系アメリカ文学を専攻するきっかけとなったトニ・モリスンらの作品世界の魅力と言葉の力には、言葉の壁を越えて心に響いてくるものが確かにあった。そこで作品と向き合い、ひとつずつ感情の経験を心に刻むうち、いつの頃からか英語は私にとって血肉の通ったものへと変容していった。
外国語の習得には、世界へ飛び出して行き異国の人々の意志疎通を図るための道具を手に入れるという側面と、個人の感性が異なる歴史や文化を担う言語と衝突して生まれる内面の経験を蓄積し言葉を我がものとしていく側面の2つがあるのではなかろうか。英米文学科に入った以上、その両方を手に入れて欲しいと思う。

担当科目

アメリカ事情、アメリカ文学演習、基礎演習、アメリカ小説F研究、特別演習

研究者情報

青山学院大学 教員情報