Gene Clark. No Other

 The Byrdsのオリジナルメンバー、ソングライターでありながら、大成功の渦中の1966年早々とバンドを去ってソロ活動に入ったGene Clark。その男臭くも繊細な歌声と、カントリー&フォークに根ざし朴訥としながらも同時にとても洗練されてもいるソングライティングでお馴染みです。そんな彼が1974年に発表したアルバム No Other のリマスター/リイシュー盤が、45周年を記念してイギリスの4ADレーベルから出ました。

 いや、出ます、といったほうが正確です。なぜなら、このリイシューアルバムの発売日は、2019年11月8日のはずなのです。

 https://4ad.com/news/1000

 あらかじめレーベルのサイトで数ヶ月前に予約していたこのアルバムは、しかし、早くも先週末には、はるばる海を越えて我が家に先着してしまいました。はじめはまだ発売日前だとさえ気づいていなく、やったあー来たああとただ大喜びで聴いていたのですが、その後ダウンロードコードを使ってレーベルのサイトからMP3ファイルを落とそうとした際にエラーばかりが出てうまくいかず、ひとまず問い合わせのメールを出したところ、レーベルの担当者からは「え、だってまだ発売されてないんだけど、一体どこで買ったの?(暗示=あんた、何言ってんの?)」との返事。

 その時点でまだ発売前にも関わらず、何の因果かどこの妖精のミステイクか、わざわざ東京の我がターンテーブルまでやってきてすでに回ってしまっていることに気づきビックリ。レーベルの担当者にも「確かにまだ発売前なんですね、でも家に来ちゃってるんだけど…大丈夫?」と返信。するとすぐに、

I suppose it doesn’t really matter considering the fact that the record has been available for 45 years.

ととっても気のきいた返事が返って参りました、とさ(それにしてもユルい!羨ましい!)。

 世界中の熱心なGene Clarkマニアがまだかまだかと待ち焦がれているだろう今作が、よりによってわたしのような日本に住む、しかも比較的ライトなファンのもとに先に誤配されてしまうとは。この出来事を、響きもとても良いので、「No Other事件」と名称したいと思います。この我が家に来たレコードが、本来は商品として出荷されるべきじゃなかったテスト盤かなんかだったらなおのこと嬉しいですね(ちょっとしたコレクター根性)!

 Sly & The Family StoneをGene Clark風にしてみましたというような曲想のM3 “No Other”から、荘厳でありながらもコンサートホールというより砂漠の広がりを彷彿させる男女混声コーラスからNeil Young調のロックバラードへじわじわと盛り上がっていくM4 “Strength of Strings”(Aメロですぐに転調する不穏な心地よさが最高です)、そしてGene Clark印のポップなカントリー曲 M7 “True One”が実にココロに沁みます。いちいちメロディーラインが凝っているんですよね。ちなみに、Beach House や Fleet Foxes、Grizzly Bearなどの現代のバンドたちもこのアルバムに夢中で、2014年には有志を集めて再現コンサートをやっています。
 

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