コロナ禍 (COVID-19 situation)ゆえに、史上初のオンライン授業オンリーという方針に日本中の多くの大学が転換した、疾風怒涛の2020年度前半もいよいよ終わりを迎えました。果たして無事終わったといえるのか、果たしてオンライン授業という形式で大学は求められている教育機関の役目をまっとうしているといえるのか、果たしてスクリーンからのブルーライトに終日晒されていたわたしたちの視力はどれくらい落ちてしまったのか（当方老眼がさらに激しく進行中）、などなど、オンライン授業という形式に関してはいまだに議論が絶えないところがあります。いやオンライン授業であるがゆえに教育効果があがるのだ、とか、やはり学生同士の交流の受け皿となってこそ学校という機関の意義があるのだ、とか、ほんとうにさまざまなご意見があります。
授業を担当している教員としては、とにかく毎週の「ひとりぼっちの放送部」というミッションを黙々と、ときには真夜中に無理やりにテンションをあげながら、完遂することで精一杯でした。YouTubeという世界最強のプラットフォームをお借りいたしまして、前期に配信した講義動画は合計113本（オンディマンド版という名の再放送版も含）、勤務する大学、非常勤として出講した大学の学生たち（およびそのご家族も観てくれていたらしくて、ちょっとお恥ずかしい…）が視聴してくれた回数は1万7000回を数えております。毎週、リアクション、励ましのコメント、無茶なリクエスト、個人的なお手紙などを返してくれた学生のみなさんとの、いわば自然発生的なアンサンブルで乗り切れたというところもあります。どうもありがとうございました。
今年は「アメリカポピュラー音楽の文化史、文学史」の講義も、青山学院大学文学部と慶應義塾大学文学部で担当いたしました。18世紀の ballad 文化から、20世紀のJazzにblues、最後は21世紀のIndie Rockまで、汗血馬で駆け抜けるような構成になってしまいましたが、いかんせんわたしのポピュラー音楽好きゆえのこだわりも多少は発揮されてしまったゆえに（毎回どのようなシナリオで講義を構成し、どの曲、ミュージシャンにフォーカスするか？を決めるのに、とっても時間がかかるのです）、入門編のようでいながら同時に応用編のような文化史講義になったかな、と目まぐるしすぎた講義配信のルーティンを終えた現在は穏やかに振り返っています。
履修学生たちから「プレイリストをつくってほしい」というリクエストを毎回いただいていたのですが、そのための時間的猶予さえなくて申し訳ございませんでした。この酷暑、しかもなるべく部屋で過ごすことが望ましいとされる極めてディストピアじみてさえいる真夏 (“Spending warm summer days indoors” by The Smiths) 、そんな日常の伴侶となるような曲を選んで、講義内容にも対応させたプレイリストを今更ながら作成してみました。DJ的なエモいというかキモいこだわりを自分なりに残しつつ、なるべく入門的・網羅的になるように、渾身の選曲をしてみましたので、よかったらSpotifyで聴いてみてください（わたしはApple Musicは使っていないので、Apple Musicユーザーの方にはすいません）。曲の並びも大事なので（！）、できればこの順序で聴いていただきたいです。そうすると、わたしがこっそりこの曲群の配列に隠したメッセージがぼんやりと浮かび上がってきて、ダヴィンチ・コードならぬサイトー・コードが解読できるかもしれませんよ。
写真は、ときどきベランダに遊びに来る「地域猫」です。わたしがリビングで音楽をかけているとなんだか嬉しいみたいで、こうやって網戸越しのエアコンの冷気を求めながら鎮座し、短いというかほとんどない尻尾でリズムを取っています。この選曲中もブラリとやってきてニャアニャアと話しかけてきました。傾向として、Indie rock 、特にギターが歪んでいるがBPMはそこまで速くない Dream pop系 (今回のリストだと Best Coast とか）が好きみたいです。ちょっと無駄遣いかなと感じながらもレコードを買ってしまうときに、これは地域猫のための情操教育なのだから慈善事業だ、と無理な言い訳をしはじめているわたしがいますが、そんなわたしの心のやわらかい場所さえ溶けてしまうようなこの暑さ、そして毎日のやるせなさ。ぜひ眠れない夜は”Summer Madness”で落ち着けてあげてください。
Summer Madness 2020 (funk, disco, R&B, hip-hop)
Summer Isolation 2020 (Indie rock/pop)
Summer Hypnosis 2020 (All genre)