THE BEST 10 Songs (Albums) of 2020

 憶えていない。きっと、このひと言が2020年のわたし自身の毎日を説明するのに、もっともしっくり来るのだと思います。オンラインで2つの特講もやっていました、論文のための資料集めもしました、たくさんのお仕事メールも交わしました。しかし、それらがすべて、自宅の書斎という4畳ちょっとの閉域で行われていたため、においや風景といった感覚をまったく伴っていないので、うまく記憶として像を結んでいません。8月まではノンストップでオンライン授業、9月からは公式には「在外研究期間」という研究休暇をいただいていて時には贅沢に時間を持て余してさえいるわけですが、その毎日がどこに向かっているのか、どこに積み上がっていくのか、水平にも垂直にも、方向性がない。1人の人間としては、一挙に年老いて無為の余生を過ごしているような、と同時にまるで子どものように自身の茫漠たる将来の広がりに恐怖を覚えてもいるような、心理と生理のどうにも落ち着かない状態を生きている。そして、記憶には何も定着しない。
 新聞やニュースはただただ意味の厚みを失った数値を垂れ流している。意味を発することを拒絶し言葉を用いることを諦めた政治家たちには、もはや浅黒い顔色だけしか残っていない。
 まさかこのだらしない悪夢のような時間がこんなに長く続くとは。その予想さえ十分にできていなかった自分の不分明を、今となっては恥ずかしくも思います。だって、春先の4月くらいには、「夏になったら教室で授業もできるかもね!」とか学生と話していたんですからね。つまるところ、上述したような方向性のなさ、それゆえにふり出しに戻ってしまう、という感覚を、結局拭い去ることが叶わなかった。個人的にはその痛恨がずっとあります。

 そんな2020年、新しく発表された曲のなかで、とてもよく聴いたもの、個人的に愛好したもの、を紹介したいと思います。開放感ではなく閉塞感、コミュニケーションよりもメディテーション、といった質感の美しい曲が数多く生まれており、またどこにも行けない2020年の生活がそのまま音楽のかたちになるかのように、めくるめく展開よりもミニマリスティックな反復、といった曲想がとてもよく目立ちました。

 2021年は、「あちら側」を見通せる方向性を、もう一度取り戻せますように。「在外研究」を実現させるべく、アメリカへの渡航準備も着々と進めています。それではみなさん、ハッピーニューイヤー!

 

10. valknee 「SUPER KAWAII OSHI」 (from the EP 『Diary』)

 

9. Tomo Nakayama. “Get to Know You” (from the album Melonday)

 

8. Widowspeak. “The Good Ones” (from the album Plum)

 

7. Dirty Projectors. “Overload” (from the album 5 EPs)

 

6. Jeff Parker. “Go Away” (from the album Suite for Max Brown)

 

5. Fleet Foxes. “Sunblind” (from the album Shore)

 

4. Arlo Parks. “Caroline”

 

3. Christian Lee Hutson. “Atheist” (from the album Beginners)

 

2. Pure X. “Middle America” (from the album Pure X)

 

1. Mac Miller. “Good News” (from the album Circles)

検索語を上に入力し、 Enter キーを押して検索します。キャンセルするには ESC を押してください。