2019年の音楽リスナー生活は、ある意味では怠惰というか、20年前に回帰してしまったというか、新しく学習すべきジャンルを少しづつ聴いてみようとかもせずに、アメリカ本国で起きている政治的・文化的ムーブメントと歌手やラッパーがどうコミットしているかとかをきちんと整理することもあまりせずに、ただただ自分が好きなインディーロック(主にUS)のそれはそれで「沼」と言える世界にのほほんと沐浴していたようなものでした。とはいえ、ここ数年の間に、どんどんと若いバンドたちのアンサンブルが洗練されてきている事態は、ひしひしと、というかヒリヒリとするくらい感じていて、ポピュラー音楽の拡大再生産の内側で明らかに生まれてきているさまざまな新しい「違い」を堪能してもいます。Big ThiefやKhruangbinのような、空間というかすき間に意識を込めるタイトな演奏は、ロックとはもはや「衝動」の表出といった簡単な形式ではないということを教えてくれているのでしょう。
Men I Trust(カナダのバンド)も、Faye Webster(アトランタ出身のシンガーソングライター)も、Crumb(ブルックリンのバンド)もGirl Ray(ロンドンのガールズバンド)も、着古された洋服を今一度クリーニングしてきちんとアイロンがけしてパリッとさせているような、新しいポピュラー音楽の「再生産」に成功しているように思えます。