THE BEST 5 ALBUMS of 2019

 2019年の音楽リスナー生活は、ある意味では怠惰というか、20年前に回帰してしまったというか、新しく学習すべきジャンルを少しづつ聴いてみようとかもせずに、アメリカ本国で起きている政治的・文化的ムーブメントと歌手やラッパーがどうコミットしているかとかをきちんと整理することもあまりせずに、ただただ自分が好きなインディーロック(主にUS)のそれはそれで「沼」と言える世界にのほほんと沐浴していたようなものでした。とはいえ、ここ数年の間に、どんどんと若いバンドたちのアンサンブルが洗練されてきている事態は、ひしひしと、というかヒリヒリとするくらい感じていて、ポピュラー音楽の拡大再生産の内側で明らかに生まれてきているさまざまな新しい「違い」を堪能してもいます。Big ThiefやKhruangbinのような、空間というかすき間に意識を込めるタイトな演奏は、ロックとはもはや「衝動」の表出といった簡単な形式ではないということを教えてくれているのでしょう。
 Men I Trust(カナダのバンド)も、Faye Webster(アトランタ出身のシンガーソングライター)も、Crumb(ブルックリンのバンド)もGirl Ray(ロンドンのガールズバンド)も、着古された洋服を今一度クリーニングしてきちんとアイロンがけしてパリッとさせているような、新しいポピュラー音楽の「再生産」に成功しているように思えます。

 若いミュージシャンたちだけに限りません。第3波フェミニズムRiot Grrrl世代のSleater-Kinneyが、#metooムーブメント以降に放ったニューアルバムだって、ファミニストパンクは決して若者だけのものではなく、その可能性は40代に差し掛かった人間たち(もちろん男女バイナリー、ノンバイナリー問わず)にとってもまだまだ「続ける」べき何かなのであると「新しく」痛感させてくれる、超最高作でした。

 足を運んだライブでもっとも記憶に残ったのは、7月27日のフジロック。会場が洪水になるほどの豪雨の向こう側で、American Footballが演奏している姿が目に焼き付いています。あとは5月9日に渋谷WWWで観たAndy Shauf。ささやくような小さな声と抑えたギターのボリュームで、聴衆を圧倒することができてしまう19世紀の説教師然とした雰囲気にすっかり降参しました。

 2020年度はアメリカのポピュラー音楽と歴史、社会についての講義も担当するので、もっとラテン、トラップ、エレクトロ、幅広く聴いて、そのコンテクストを自分の言葉と知識で分節化できるように頑張りたく思います。

 

1. Big Thief. U.F.O.F. & Two Hands(4AD)

2. Khruangbin. 『全てが君に微笑む』(日本限定盤) (Night Time Stories)

3. Girlpool. What Chaos Is Imaginary (Anti)

4. Brittany Howard. Jaime (ATO)

5. ミツメ. 『ゴースト』 (MITSUME)

 

 

2019 Best Songs

American Football. “Uncomfortably Numb”

 

Sleater-Kinney. “Can I Go On”

 

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